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出血すると血が止まりにくくなる病気、血友病A・Bとは?原因や症状、治療まとめ

出血を止めるために必須の3要素には、血管、血小板、凝固因子があります。血友病はこの3つのうち、凝固因子が生まれつき欠損またはその働きが低下する遺伝性血液凝固異常症です。

1人の医師・医学生がチェック済み

血友病とは

血友病とは生まれつき血液を固める凝固因子の一部の働きが弱い、またはまったく働かないために、止血に時間がかかることにより発生する病気です。

すなわち「出血が止まりにくい」のであり、「自然に出血しやすい」わけではありません。

関節内出血や筋肉内出血が主な症状で、血尿や消化管(口腔内)出血も見られます。
普通の人なら問題とならない打ち身や激しい運動が出血の原因となります。
また、健常者なら自然に止まるわずかな出血でも大きな血腫(血の固まり)となってしまうことがあります

患者数

血友病A 患者数

血友病は出生男子1万人に1人の割合で発生するとされており、平成21年度の血液凝固異常症全国調査によると、血友病Aは4,394人、血友病Bは952人と報告されています。

血友病の種類

血友病A

人の血液の中には血液を固まらせるための凝固因子が約13種類あり、このうち第VIII因子が欠けているものを第VIII因子欠損症といい、これが一般に血友病Aと呼ばれます。
血友病患者の8割以上がこのタイプの疾患です

血友病B=クリスマス病

凝固因子のうち第IX因子が欠けているものを第IX因子欠損症といい、これが一般に血友病Bと呼ばれます。
血友病患者の約2割がこのタイプになります。
血友病Bと初めて診断された人がイギリス人で「クリスマス」という名前だったため、別名クリスマス病とも呼ばれます。

血友病患者にエイズ患者が多かった理由

日本でエイズ感染が発見された時、その感染者のほとんどは輸入血液製剤で感染した血友病の患者さんでした。
当時、輸入血液製剤にエイズウイルス混入の可能性が指摘されていましたが、日本では対応が遅れ、使用が止められなかったために感染が広がってしまったのです。
現在では血液製剤にウイルス混入の可能性がないように対策が取られていますが、当時感染した約2,000名の患者のうち、多くの方が亡くなりました。
これは「薬害エイズ」として大きな問題となっています。

血友病と白血病の違い

白血病と血友病はともに血液の病気で、名前が似ていることから混同されることが多いですが、まったく別の病気で、この2つに関連性はありません。
白血病とは血液のがんで、赤血球・白血球・血小板などの血球をつくる造血幹細胞が骨髄の中でがん化して、無制限に増殖する病気です。

女性は血友病にならない?

血友病患者の男女内訳は血友病Aで男性4,446人、女性29人、血友病Bで男性958人、女性13人と圧倒的に男性が多くなっています(平成21年度 血液凝固異常症全国調査より)。
これは、血友病がX染色体の劣勢遺伝(記事中盤で説明)により発生するものであり、父親または母親のどちらかに凝固因子の変異が見られても、生まれてくる女の子は血友病にならないことによるものです。
しかし、ごく稀に血友病の男性と保因者の女性が結婚した場合、その子どもは女の子でも男の子でも血友病を発症します。
この場合、血友病の子どもが生まれる確率は男女ともに50%となります。

妊娠・出産時にはじめて気づくことも

ある調査によると、血友病患者の母親の多くは自分が保因者と知らされておらず、自分が血友病の保因者であることを知ったきっかけは、出産時もしくは子どもの診断後に受けた検査だったと回答しています。
血友病保因者の母親は、その事実を大人になるまで、出産時まで認識していない傾向がみられます。
その原因としては、母親の家族が遺伝病に対する社会的偏見を懸念した結果、あるいは医師や看護師など医療従事者が保因者のケアの必要性を理解していなかったからかもしれません。

血友病の原因

遺伝的要素

血友病Aは第VIII因子遺伝子の変異、血友病Bは第IX因子遺伝子の変異が原因で起こる病気ですが、これらの遺伝子はどちらもX染色体上にあります。
これは「X染色体連鎖劣性遺伝」と呼ばれるもので、親から子へ伝わる可能性の高い遺伝性の病気です。

発生の確率

血友病A 発生の確率

【父親が血友病で、母親が血友病ではない場合】

生まれてくる男の子は父親からY染色体のみを受け継ぐため血友病にはなりません。
確率としては0%です。

しかし女の子は父親のX染色体を受け継ぐため、すべてが血友病保因者となり、その子ども、血友病患者の父親の孫の代で血友病患者が生まれることがあります。
その確率は次に示す例と同じになります。

【母親が保因者で、父親が血友病でない場合】

この場合は生まれてくる男の子も女の子も母親の2つあるX染色体のうちどちらかを受け継ぎ、2つのX染色体のうち変異のあるほうを受け継ぐと、男の子では血友病、女の子では血友病保因者となります。
その確率は、男子か女子の生まれる確率が50%で、血友病の男子あるいは保因者の女子が生まれる確率がそれぞれ50%で、全体では25%になります。

後天性の血友病、突然変異で血友病になることも

すべての血友病患者のうち約3分の1は、家族に血友病の患者がおらず、新規もしくは突然変異によって血友病が発生しています。
両親ともに遺伝子に異常がなくても、突然変異により保因者の女の子、または血友病の男の子が生まれる場合があります。
血友病の発症には遺伝と突然変異という2つのパターンがあると考えられています。

因子を持った女性(保因者)の問題

血友病の保因者である女性が男の子を産む可能性がある場合、母子ともに安全なお産をするための環境を整える必要があります。
例えば鉗子分娩や吸引分娩は、赤ちゃんの出血のおそれがあるので、絶対にしてはならないとされています。
因子を持った妊婦は、凝固因子の働きが通常より低いこともありますので、産後の出血に処置が必要となる場合もあります。
また、生まれてきた男の子が血友病であった場合にそなえて、診断や治療の準備をしておくことも必要です。

血友病の症状

血友病患者には、皮下出血や筋肉内出血関節内出血が高頻度にみられます。

筋肉内出血

筋肉内出血とは、筋肉を覆っている膜と筋肉の間、あるいは筋肉の中に起きる出血のことを指します。
出血による血腫は筋肉を圧迫し、痛みや腫れの原因となります。
筋肉内出血で注意すべき点は、筋肉自体だけでなく、筋肉の周りにある神経や血管までを圧迫してしまうことです。
筋肉の圧迫が続くと筋肉が引きつった状態になって長さが変わり、関節に障害がなくても関節が曲がりにくくなります。
神経の圧迫によりマヒが起きたり、血管が圧迫されると手足の血流障害を起こすこともあります。
これらが長期に及ぶと後遺症が残ることがあります。

関節内出血

血友病A 関節内出血

血友病に特徴的なもうひとつの出血は関節内出血で、膝、足、肘などの関節内に出血を繰り返すことで炎症を起こし、関節構造が破壊されます。
最終的には関節の動きが悪くなり、可動範囲が制限されて血友病性関節症へと至ります。

出血場所

血友病患者には幼少時から出血症状があらわれます。
出血する部位は、頭蓋内、関節内、筋肉内など体の深部で多く発生します。
年齢と活動状況によって出血しやすい部位が異なり、以下のような特徴があります。

乳幼児

乳幼児では皮下出血や外傷による出血が多く見られます。
血友病が生まれてすぐに見つかることは少なく、寝返りや這い這いを始める生後半年ごろになってはじめて出血に気づくことが多いようです。
乳幼児期に見られる主な出血は、転んだりぶつけたときに起きる皮下出血(青あざ)、口の中の出血などです。
また転落などの明らかな原因がないのに頭蓋内出血を起こすことがあり、注意が必要です。

子供~青年期

小児期になると活動量が増えるため、切り傷からの出血や打撲後の皮下出血に加え、関節や筋肉への出血も多く見られるようになります。
関節内出血では足首と膝の出血が他に比べて多いようです。
また、鼻からの出血を繰り返すこともあります。
親の目が届きやすい乳幼児期よりも、小児~青年期には定期的な血液凝固剤の補充を怠りがちになることもこの時期の課題ととらえられています。

血友病の治療

診断

活性化部分トロンボプラスチン時間

活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とは、血液が凝固するまでの時間を計るもので、血友病かそうでないかを見る採血検査として最も重要なものです。
しかし、出血症状が比較的軽度な場合は、この検査ではわからないこともあるため、第VIII因子、あるいは第IX因子の状態を調べて診断を確定します。
血友病は出血症状によって重症度分類がなされており、重症度が高いほど凝固因子の働きが弱いことになります。

薬物療法

血友病治療の基本は、不足している血液凝固因子を注射により補う補充療法と呼ばれるものになります。
補充療法によって早期に止血することが重要です。

凝固因子製剤

血友病A 凝固因子製剤

補充療法に用いられる血液凝固因子製剤とは、血小板とともに止血に重要な働きをする血漿中の凝固因子のうち、第VIII因子、第IX因子をそれぞれ個別に取り出して凍結乾燥したものです。
これを専用の液に溶かして使用します。
血液凝固因子製剤は主に血友病の治療に使われますが、血友病以外にも、大量出血を伴う手術などで使われることがあります。

デスモプレシン療法

血友病A患者で、軽症あるいは中程度の症状の止血をするために行われる治療法です。
デスモプレシン酢酸塩(下垂体後葉ホルモン)というお薬を、10~20分ほどかけてゆっくり投与します。
デスモプレシンは蓄えられている第VIII因子を血中に放出し、第VIII因子の血中濃度を上げて止血効果を高める働きがあります。
重症の血友病A、血友病Bの治療には使われません。
このお薬は繰り返し投与すると、効果が減弱する場合があります。
また、投与前にデスモプレシンに反応するかどうかの検査を行う必要があります。

血友病治療薬(血液製剤)一覧

血友病A 血友病治療薬(血液製剤)一覧

補充療法

血友病の治療の基本は、血液凝固因子製剤を注射薬で補う「補充療法」です
補充療法は病院で行う場合と、家庭などで行う場合とに分けられ、家庭などで行う方法を「家庭輸注療法」といいます。

(1)オンデマンド療法

オンデマンドとは「必要に応じて」という意味で、出血を起こした時点で血液凝固剤を投与し、止血を行う治療法のことです。
この方法では予防的な止血効果は期待できませんので、現在では次にあげる「定期補充療法」が主流になっています。

(2)定期補充療法

血液凝固製剤を週に数回投与して、血液中の凝固因子の量を一定レベルに維持し、出血や炎症を防いで、関節障害などの発生を抑える治療法です。

(3)家庭輸注療法

血友病A (3)家庭輸注療法

定期補充療法を病院で行うのではなく、患者さん自身あるいは家族が自分で投与する治療法で、現在ではこれが主流となっています。
病院などで説明を受け、トレーニングをしてから開始します。

ガイドライン

ガイドラインとはある病気の治療が、どの病院でも、どの医師でも標準的かつ共通に行われることを目的に作成されるものです。
血友病の治療は日本血栓・止血学会が2013年に発表した「インヒビターのない血友病者に対する止血・治療ガイドライン」「インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血・治療ガイドライン」にそって行われています。
このガイドラインでは、従来幼児~小児のみに提示されていた「定期補充療法」を成人患者にも推奨し、出血した際の治療だけでなく、出血させないための最新の治療法について記載しています。

止血の方法

血友病A 止血の方法
出典:www.sst-jp.net

出血への対応は注射薬による補充療法が基本ですが、早期に適切な対応を行うために軽度な出血への補助的な治療として以下に示す(RICE)の頭文字をとった方法が推奨されています

Rest(安静)

出血時には出血を最小限にとどめるため、出血部位をできるだけ動かさないようにします。
乳幼児などで安静が難しい場合は、副木やギプスなどを使って固定します。

Ice(冷却)

氷のうや冷却剤、冷湿布、冷えたタオルなどで出血した部分を冷やします。
冷たくすることで血管が収縮して血が出にくくなり、熱を吸収し痛みを軽減する効果があります。

Compression(圧迫)

タオルやガーゼなどを使って出血部位を適度に圧迫することで止血を助けます。
関節内出血の場合には、サポーターや包帯による圧迫も行います。

Elevation(拳上)

出血した部分を上にあげて安静にすることで、出血量を抑えることができます。

自己注射

血友病A 自己注射

血友病の基本治療である血液凝固因子の補充を病院で行うのではなく、医師の指導の下に家庭で自己注射として行うことができます。
家庭で自己注射を行うために、簡単に保管できて準備にも時間のかからない各種製剤が開発されています。

費用

血友病の治療を経済的な心配なく受けられるように、国や自治体が医療費助成制度を定めています
これらの制度を利用すれば、血友病の患者さんは自己負担なしで治療を受けることができます。
詳細は自治体によって異なりますので、各自治体にお問い合わせください。

東京都福祉保健局 医療費助成(先天性血液凝固因子欠乏症等)のご案内

副作用と合併症

インヒビターの発生が課題

血友病の治療に大きな課題となるのがインヒビターの発生です。
血液凝固因子を使い続けていると、投与した凝固因子を中和して効果を失わせる物質(インヒビター)ができます。
インヒビターは、外部から投与された第VIII因子あるいは第IX因子を外敵とみなし、異物として排除しようとします。
そのため製剤の効果が十分に発揮されないということが起きてしまいます。
いったんインヒビターが体内にできてしまうと次のように特別な治療が必要になります。

合併症の治療法

血友病A 合併症の治療法

インヒビターが発生した場合の治療は、バイパス療法と呼ばれる治療を行います。
この治療法は、主に活性化VII因子を含んだ凝固因子製剤を用いて、VIII(IX)因子以外の凝固因子(X因子以降)を直接活性化させることにより、止血を促す治療法です。
バイパス療法に使用される製剤には、活性化VII因子だけを精製した製剤と、活性化VII因子とともに他の凝固因子も含有している活性化プロトロンビン複合体製剤があります。

ウイルスの混入

かつて血友病患者が使う血液製剤にB型肝炎、C型肝炎、そしてエイズウイルスの混入がみられ、様々な問題を引き起こしました。
現在ではそれを防ぐために加熱処理された製剤や遺伝子工学から生成された製剤が開発されており、ウイルス混入の危険性はないとされています。

出血による関節障害(血友病関節症)

血友病の患者は筋肉内出血や皮下出血など、様々な出血が起こります。
その中で関節内出血が起きると関節内に鉄が沈着し、鉄が刺激となり軟骨に障害が生じます。
それが間接破壊を引き起こしますので、出血させないための予防と出血した場合の止血処置が極めて大切になります。

血友病関節症の治療・手術

血友病A 血友病関節症の治療手術

血友病関節症の治療では、痛みを軽減するためにヒアルロン酸を注入する方法、専用の装具を使う方法などがあります。
また関節内の炎症部位を切除する滑膜切除術や、関節症が進んだ場合に行う人工関節置換術などの手術が行われる場合もあります。

最終更新日: 2016-11-16

タグ:
血友病A 血友病B

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